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サウナの健康への影響についての医学的エビデンス

(お茶の水循環器内科公式ホームページより引用)

サウナの健康への影響について医学的エビデンスをまとめました。サウナは健康に良いのか悪いのか、以前から様々な議論がありましたが、サウナと高血圧、心臓突然死、冠動脈疾患、心血管疾患、全死亡、慢性心不全、脳卒中、くも膜下出血、熱中症との関係について研究した文献を見付けました。一言で言うと、高血圧の発症が約50%減り、心臓病の発症も約40%減り、全死亡も約40%有意に低下し、脳卒中の発症が60%減り、心不全にも良い影響があるようで、さらに肺炎リスクを減らし、一方で未破裂脳動脈瘤がある場合は破裂の誘発因子になるかも知れなくて、熱中症には注意ということがわかりました。以下、具体的に詳しくまとめました。

◆2017年に発表されたサウナと高血圧症発症との関係について検討したフィンランドの研究では、血圧正常の42〜60歳の男性1621例を中央値で24.7年追跡しました。結果、サウナ浴の頻度が週1回群と比較して、2〜3回群、4〜7回群の高血圧発症のハザード比は、0.76(95%CI 0.57〜1.02)、0.54(95%CI 0.32〜0.91)と、サウナ浴の頻度が多いほど高血圧症の発症が少なかったという結果になりました。詳しくは論文をご覧ください。
「Sauna Bathing and Incident Hypertension: A Prospective Cohort Study.」
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28633297

◆2015年に発表されたサウナと心血管疾患の関係を検討したフィンランドの研究では、年齢42〜60歳の男性2315人を中央値で20.7年追跡しました。サウナ浴の頻度が週1回群、2〜3回群、4〜7回群の3群に分けて心血管疾患の発症率を比較した結果、心臓突然死(10.1%、7.8%、5.0%)、冠動脈疾患死(14.9%、11.5%、8.5%)、心血管疾患死(22.3%、16.4%、12.0%)、全死亡(49.1%、37.8%、30.8%)と全ての評価項目においてサウナ浴の頻度が多いほど心血管疾患の発症が有意に減りました。特に週4-7回サウナに入る人は全死亡が約40%も低下するということには驚きです。詳しくは論文をご覧ください。 
「Association between sauna bathing and fatal cardiovascular and all-cause mortality events.」
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25705824 

◆2018年に発表されたサウナと脳卒中の関係を検討したフィンランドの研究では、53-74歳の男女1628名を中央値で14.9年追跡しました。結果、サウナ浴の頻度が週1回群と比較して、4〜7回群の脳卒中発症のハザード比は0.39(95%CI 0.18〜0.83)と有意に脳卒中の発症を減らすということが報告されました。脳卒中には虚血性脳卒中と出血性脳卒中の2種類の病型がありますが、虚血性脳卒中においてより関連が高い傾向が認められたとのことです。いずれにせよ、週4〜7回サウナに入る人は約60%も脳卒中の発症が低下するとは驚きです。
「Sauna bathing reduces the risk of stroke in Finnish men and women: A prospective cohort study.」
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29720543

◆また、日本特有の療法として「和温療法」というものがあり、「乾式遠赤外線サウナ装置により60℃の均等乾式サウナ浴を15分間施行後、出浴後30分間の安静保温を行うもの」とされており、一般的なサウナと一致するかどうかはなんとも言えませんが、慢性心不全に対して、BNP、NYHA心機能分類、6分間歩行距離、心胸比において改善が認められ、日本循環器学会「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」にも記載されています。一方で、高度の大動脈弁狭窄症や肥大型閉塞性心筋症の重症例、感染症などの急性期には慎重にすべきと記載されており、注意が必要です。詳しくは日本循環器学会「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」をご覧ください。
「Waon Therapy for Managing Chronic Heart Failure – Results From a Multicenter Prospective Randomized WAON-CHF Study.」
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27001189
日本循環器学会「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」 
http://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/06/JCS2017_tsutsui_h.pdf

◆2017年に発表されたサウナと肺炎リスクとの関係を調べたフィンランドの研究では、42歳〜61歳の男性2210例を対象に、25.6年間の追跡を行いました。結果、様々な因子調整後の肺炎リスクは、サウナ入浴の回数が週1回以下の群と比べて、サウナの回数が週2〜3回以上の群で28%低下(HR 0.72 95CI 0.57–0.90)、週4回以上の群で 37%低下(HR 0.63 95CI 0.39–1.00)を認めました。詳しくは論文をご覧ください。
「Frequent sauna bathing may reduce the risk of pneumonia in middle-aged Caucasian men: The KIHD prospective cohort study」
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29229091

◆一方で、 250例のくも膜下出血患者を対象に脳動脈瘤の破裂のトリガーとなる因子を検討したオランダの研究では、サウナに限らずに急激な温度変化は相対リスク2.9(95%CI 0.6〜14)で未破裂脳動脈瘤の破裂の誘発因子である可能性が指摘されていますので注意が必要です。
「Trigger factors and their attributable risk for rupture of intracranial aneurysms: a case-crossover study.」
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21546472 

◆2015年に発表された日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2015」では、直接的にサウナ自体の記載はありませんが、「高温多湿な環境、飲水の機会が少ないと重症化しやすい」と記載されており、十分な水分摂取をしないこと、高温多湿な環境に対して注意を呼び掛けています。詳しくは日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2015」 をご覧ください。 
日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2015」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/heatstroke2015.pdf

◆ナバ・フルム博士、アーノン・プラム医学博士が実施した「心不全患者に対するサウナ入浴の有益効果」の研究によると…
一般的にサウナ入浴は慢性心不全の患者には禁忌とされていますが、実は忍容性は良好であり、1回の曝露後および4週間のサウナ入浴(週5日)後の慢性心不全患者で血行動態の改善が示されています。左心室駆出率は24±7%から31±9%に増加し、左心室拡張末期の寸法は4週間後に66±6㎜から62±5㎜に減少しました。また、研究では、長期のサウナ入浴が高血圧患者の血圧を下げ、慢性うっ血性心不全(CHF)患者の左心室駆出率を改善するのに役立つ可能性があることも示しています。
「Beneficial effects of sauna bathing for heart failure patients」
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2359619/

注)狭心症等の心疾患の急性期や心不全の程度によっては入浴を避けたほうが良い場合もありますので、わからない場合には主治医にご相談ください。